検索広告の月額予算は、受注一件のために媒体へ支払える金額から考えると、採算との関係が分かりやすくなります。その金額に問い合わせからの受注率を掛けると、問い合わせ一件に使える広告費の上限が出ます。さらに月に見込む問い合わせ件数を掛けたものが、月額予算の候補です。

ただし、使える金額が分かっても、その金額で問い合わせが集まるとは限りません。採算から求める許容単価と、広告で実際に獲得できる単価を分けて考える必要があります。

粗利のうち、受注一件にいくらまで使えるか

たとえば、受注一件の売上から商品やサービスの原価を引いた粗利が20万円あるとします。以下の金額と割合は、関係を説明するための仮定です。相場や推奨予算ではなく、金額は税抜きで考えます。

粗利20万円の全額を広告に使えるわけではありません。営業対応などの費用をまかない、会社に利益を残す必要もあるためです。この例では、それらを考慮したうえで、受注一件につき媒体へ支払える広告費を5万円と決めたことにします。粗利から自動的に5万円が出るのではなく、事業側で決める配分です。

問い合わせのうち20%が受注につながるなら、問い合わせ一件に使える媒体費は「5万円×20%=1万円」です。これが許容問い合わせ単価になります。5件の問い合わせに計5万円を使い、そのうち1件が受注するという関係です。実際に5件ごとに必ず受注するという意味ではありません。

受注率と問い合わせ単価は、同じ問い合わせを基準にする

この計算で数えるのは、営業の対象になる有効な問い合わせです。迷惑送信や重複送信を含むフォーム送信数とは分けて考えます。許容単価を有効な問い合わせ一件あたりで求めたなら、広告実績の単価も、媒体費全体を有効な問い合わせ数で割って比べます。迷惑送信につながった分の費用だけを差し引くことはしません。

受注率の分母も同じ範囲にそろえます。ただ、今月の受注数を今月の問い合わせ数で割るだけでは、過去に問い合わせた案件の受注が混ざることがあります。商談が長い場合は、受注・失注の結果まで追えた問い合わせ群を基にした割合が参考になります。まだ結果の出ていない案件を失注とみなしたり、都合よく除いたりすると、予算の前提が変わってしまいます。

また、紹介や既存顧客からの問い合わせの受注率が、検索広告にもそのまま当てはまるとは限りません。先ほどの20%も、検索広告経由の有効な問い合わせから受注に至る割合として置いた仮定です。

月20万円で20件を見込める条件

許容問い合わせ単価が1万円で、有効な問い合わせを月20件見込むなら、月額媒体費の候補は「1万円×20件=20万円」です。ただし、売上目標から20件欲しいと考えたことだけでは、その件数を獲得できる根拠にはなりません。

同じ例で、広告の平均クリック単価を400円とし、クリックの4%が有効な問い合わせになると仮定します。20万円で得られるのは「20万円÷400円=500クリック」です。その4%が問い合わせになれば20件となり、問い合わせ単価は1万円に収まります。ここでの4%はクリックから問い合わせになる割合で、先ほどの20%は問い合わせから受注になる割合です。

では、問い合わせになる割合が2%だったらどうでしょうか。同じ500クリックでも問い合わせは10件にとどまり、単価は「20万円÷10件=2万円」になります。この条件で20件を得るには、計算上40万円が必要です。予算を倍にしても単価は2万円のままなので、許容単価1万円には収まりません。

この違いが、予算不足と採算の不一致を分ける理由です。件数を増やすための増額が成り立つのは、実際の獲得単価が許容範囲にあり、増額後も必要なクリックを得られる見込みがある場合です。検索される量が限られていれば、予算を増やしても件数が比例して増えるとは限りません。

クリック数や費用の見込みには、過去の広告実績や媒体の予測を参考にできます。たとえばGoogle広告のキーワードプランナーにはクリック数や費用などの予測がありますが、実際の結果と異なる場合があります。有効な問い合わせの割合や受注率まで保証するものではありません。Google広告の予測について

媒体費20万円と、広告施策全体の支出は異なる

ここまで計算した20万円は、媒体へ支払う広告費だけです。運用を委託する費用やページ制作費が別にかかるなら、広告施策全体の支出はそれより大きくなります。税も実際の支払いに加わります。受注一件に使える媒体費を決める際に、こうした費用を考慮しておく必要があります。

採算が合っていても、その予算を使えるとは限らない点もあります。月20件の問い合わせに営業が対応できなければ、仮定した受注率が成り立たなくなるかもしれません。また、受注代金の入金より広告費の支払いが先なら、その間の資金が必要です。継続契約の将来売上を原資として考える場合も、見込める継続期間と提供費用、回収までの時間が関わります。

受注率や問い合わせ率の根拠がない段階では、計算結果は仮の候補額です。初めての配信に充てる金額は、その候補額を回収できる前提で決めるのではなく、成果が出ない場合にも負担できる範囲として考えます。

一日の予算は、その日の請求上限とは限らない

月額の候補を決めた後は、媒体が日々費用を使う仕組みにも違いがあります。管理画面で設定する一日の予算を、その日の請求の厳密な上限と考えると、想定とずれることがあります。以下は2026年9月18日に確認した仕様です。

Google広告では、一日の平均予算を使うほとんどのキャンペーンで、日額の費用上限は平均予算の2倍です。月を通して予算を変えない場合、月額上限の基本は平均日予算の30.4倍になります。月途中の開始や変更は別の計算になるため、この倍率だけで上限を求めることはできません。Google広告の費用の上限

LINEヤフー広告の検索広告では、一日の予算の200%までがその日の請求対象になります。月途中に予算を変えない場合の月額上限は、一日の予算の30.4倍です。こちらも月途中に開始・変更した場合は別の計算が適用されます。LINEヤフー広告の一日の予算を超過した場合の請求

日によって設定額を超えること自体は、予算設定の誤りとは限りません。採算から決めた月額の候補を管理画面へ移すときは、一日ごとの費用の動きと月の請求上限を区別することで、支払いの見込みを捉えやすくなります。