SEOのKPIは、事業で増やしたい結果から逆算して決めます。受注につながる相談を増やしたいなら、検索順位より先に、問い合わせのうち何件が商談に進んだかを見る方が事業との距離は近くなります。順位や検索流入は、その結果が変わった理由を調べるための指標です。
ただし、問い合わせから契約まで数か月かかる商材を、毎月の受注件数だけで評価すると改善の手応えが見えません。最終的な成果と、そこへ進んでいるかを捉える途中の数字を分けて持ちます。指標ツリーでその関係を描き、月次表で変化を比べます。成果が出ている部分と、まだ判断できない部分を分けて読むためです。
受注から手前へたどる指標ツリー
受注を増やすには、その前に商談が成立している必要があります。さらに手前には相談の受付がありますが、送信されたものすべてが事業の対象とは限りません。たとえば、自社のサービスについて具体的な相談がある問い合わせを「有効問い合わせ」と定義すれば、営業目的の送信や重複を除いて成果を見られます。
以下は、受注につながる相談を増やしたいBtoBサイトの設計例です。有効商談は、営業が相談内容を確認し、提案へ進めると判断した案件と仮定しています。枝は詳しく調べる指標の関係を示しており、数字をすべて掛け合わせる計算式ではありません。
事業の成果:対象サービスの受注件数
├─ 受注に至る案件の進行(営業記録)
│ ├─ 有効商談の件数
│ └─ 有効問い合わせの件数
│ └─ 同じ受付月の問い合わせが、その後どう進んだか
└─ 相談が生まれる手前の変化
├─ サイト内の行動(GA4)
│ ├─ 自然検索から始まったセッション数
│ └─ そのうち問い合わせ完了を含むセッション数・割合
└─ Google検索結果での接点(Search Console)
├─ クリック数
└─ 表示回数・CTR・平均掲載順位
受注に変化がなければ、商談が増えていないのか、商談は増えているが契約まで時間がかかっているのかで読み方が変わります。問い合わせ自体が増えていない場合には、訪問が足りないのか、訪問後に相談へ進んでいないのかへ視点を移します。事業側からたどることで、検索順位だけを改善すればよいのかを考えられます。
一方、営業記録の案件がどの検索訪問から生まれたかは、このツリーを描くだけでは分かりません。SEO経由の成果として数えるには、問い合わせと流入元を対応させる記録や判定条件が必要です。対応が取れていない場合、営業側の数字は対象サービス全体の成果として扱い、SEOだけの成果とは区別します。
イベント25回と問い合わせ25件は違う
同じ「問い合わせ」という名前でも、計測上の回数と営業が受け付けた件数は別です。ここからの数値はすべて説明用の仮定であり、実績や目標の相場ではありません。対象サービスのページ群を入口とする自然検索セッションが、ある月に1,000回あったとします。
このうち、問い合わせ完了イベントを一度以上含んだセッションが20回なら、セッション単位の完了率は20÷1,000で2%です。同じセッションで複数回発生し、イベント数が合計25回になっていたとしても、この率は2%のままです。イベント回数の25を分子にすると、別の意味の数字になります。
GA4のトラフィック獲得レポートの公式説明でも、イベント数と、キーイベントが起きたセッションの割合は分けられています。この例の完了率を確認する場合も、問い合わせ完了だけを対象にします。別のキーイベントを含む率では同じ比較になりません。
さらに、20回は20人でも、重複のない20件の相談でもありません。実際の問い合わせ件数は受付記録で数え、営業が内容を見て有効かどうかを判断します。セッションと問い合わせを対応させていない状態で、営業側の有効件数を20で割っても、有効問い合わせの割合にはなりません。
検索結果でのクリックも、サイト内のセッションと一対一に対応するとは限りません。Search Consoleの指標はGoogle検索結果側の実績です。GA4はサイト内の訪問を計測し、流入元の情報もユーザー・セッション・イベントで対象範囲が異なります。数字を並べるときには、同じ人の行動を順に追跡できているのか、異なる集計を比較しているのかが判断の境目になります。
月次表では増減と判定中を分ける
月次報告では、対象と数え方をそろえた数字の変化を見ます。次の完成例では、前月・当月とも同じページ群を入口とする自然検索セッションを集計し、問い合わせ完了イベントの定義も変えていないと仮定しています。営業記録は対象サービス全体を数えたもので、自然検索との対応は未確認です。
| 観測する指標 | 前月 | 当月 | この比較から分かること |
|---|---|---|---|
| 自然検索セッション数 | 900回 | 1,000回 | 対象ページ群からの訪問が増えた |
| そのうち問い合わせ完了を含むセッション数 | 18回 | 20回 | 完了を含む訪問も増えた |
| セッション単位の完了率 | 2% | 2% | 完了する割合は変わっていない |
| 各月の受付分に含まれる有効問い合わせ | 12件 | 判定中 | 有効な相談の増加は未判定 |
| 各月に発生した受注 | 2件 | 3件 | 受注は増えたが、受付月は混在 |
この報告で言えるのは、訪問と問い合わせ完了を含む訪問が同じ割合で増えたことです。完了率の改善は見られず、有効な相談が増えたかどうかもまだ分かりません。受注の増加をそのまま「当月のSEOが伸びた成果」と説明すると、表から分かる範囲を超えてしまいます。
当月の判定中は、成果がゼロという意味ではありません。前月と同じ判定が済むまで比較を保留している状態です。また、計測設定や対象ページ群を変えた月には、増減にその影響が含まれます。数字の定義が変わったままでは、施策による変化と区別できません。
受注率は同じ受付月の案件を追って読む
当月の受注3件を、当月の問い合わせ完了20セッションで割って受注率にすることはできません。単位が違ううえ、3件の中に前月以前の問い合わせが含まれていれば、別の集団を割り算しているためです。受注までの進み方を見るなら、同じ月に受け付けた問い合わせを、その後も追います。
たとえば、表の前月受付分の有効問い合わせ12件から、報告時点で3件が受注したと仮定します。この場合は「前月に受け付けた有効問い合わせのうち、現時点で25%が受注」と言えます。残りに商談中の案件があるなら、最終的な受注率はまだ確定していません。別の受付月と比較する際も、受付から何か月たった時点かをそろえる必要があります。
このように、月次表の受注件数は「今月起きた結果」を示し、受付月ごとの集計は「受け付けた案件がどう育ったか」を示します。契約まで時間がかかる商材ほど、この違いがSEOの評価に影響します。
目標値には事業で必要な量と実績を使う
検索流入を一律に何%増やす、と先に決めると、事業に関係しない訪問が増えても目標を達成できてしまいます。受注に必要な有効商談の量を考え、過去の案件がどの程度進んだかと照らす方が、目標の根拠は明確になります。ただし、商談から受注への割合を使う場合も、同じ集団を追った実績が前提です。
サイト側の目標へ戻す段階では、営業記録との対応がどこまで取れているかで逆算できる範囲が変わります。対応が取れていなければ、訪問数から受注件数までを一つの式で求める根拠はありません。その場合は、事業側では有効問い合わせの件数を目標に置き、サイト側では問い合わせ完了を含むセッションの数と割合を評価します。受注とのつながりが未確認でも、どこまで改善が進んだかを説明できる設計にします。